牧師・宣教師のストレスと燃え尽きについて(3)ー牧師職と一般的ストレス要因ー

<牧師職はヒューマンサービス・クリエイティブ職?>

牧師は日本ではごく珍しい職であるため、一般社会で職種別のデータなどが発表されても「牧師」がどの職種に含まれるのか、よくわからないんですよね。
無理に一般のカテゴリーに入れてもらうとしたら、
就業形態は、作家などのような自由業にも近い気がしますが、
内容的には福祉やサービス職に近い部分もあるし。

日本におけるストレスの高い仕事ランキングは、

1位 クリエイティブ職
2位 その他(公務員、教師など)
3位 サービス・販売

だそうです。
http://www.mh-guide.com/work/type.htm ストレスと健康.comより)

クリエイティブ職ってなんのこっちゃかよくわかりませんが、
自由業みたいなものだとすれば、意外な気もしますよね。
労働時間の自由さ、個人的能力への要求の高さなど
「自分しだい」なのが、
やりがいになる一方でストレスにもなるようです。

2位 その他 っていうのも、いきなり『その他』って、とツッコミたくなりますが、
こちらは逆に、公務員とか教師とか自由の制限されそうな職業っぽいですよね。
牧師も教職で、立場的には「公人」みたいになるという意味では、このカテゴリーに入っても不思議はないわけです。なんといっても「その他」ですし。

3位 サービス・販売  このサービス業というのがどの範囲までなのかよくわかりませんが、
人を相手にする職という意味では、牧師はここにも当てはまりそうな気もします。
ちなみに燃え尽き症候群になる人は、圧倒的にヒューマンサービス(人を相手にする)職種に多い(ウィキペディアより)そうです。

というわけで、牧師業はストレス多い職種に入りそうなかんじ?


<牧師は何をする人ぞ>

いや~、それにしてもほんとに、職務自体がよくわからない職です。
やってた私がいうんだから間違いなし!
一般社会的に分類されにくいだけじゃなくて、
教会においても、
実は牧師たち自身にさえ、よくわからないのでは?
(あ、私だけでした?わかってないの・・・)
後述しますが、役割がいろいろありすぎるというか、はっきりしているようでいて、
実は不明確なのが「牧師」の職務かと。

牧師の仕事は、職人や学者、クリエイターのような部分もあるし。
教師や、管理職とも似ている部分もあるし。
料理人(主の食卓に仕え、霊の糧を供給する)に通ずるところもあります。
何十時間もかけた説教が20分でぺろりと平らげられる?時の、満足感と脱力感とか(笑)。

「私はどっちかっていうと農業系~」「俺は建築家タイプ」
とかいう牧師もいるかもしれません。
私の友達は、自分を「牧羊犬」に例えていました。
牧師が何をする人かという意識は、個人差もあり、教会にもよるのでしょうね。
でも、ともかく、この何をするのかの「よくわからなさ」が、実は大きなストレス要因ではないかと思います。

たとえば、ある人がある広大な土地に連れて行かれて、
「はい、ここ君の畑ね。」
と言われるとします。
「え?どこまでが僕の土地ですか?」
「別に決まってないの。いくらでも、好きなようにやっていいから」
そう言われたら、その人はどうするでしょうか?
性格やその他のプレッシャーによりけりですが、野心家の人はやれる限りやろうとするでしょうし、
まじめな人はいくらやってもやった気がしないでしょうし、むしろ罪責感、
適度にやる人でも、なんだか満足感もなく、
常に仕事に追われている感じになりそうですよね。

範囲がわからない仕事というのは、そういうものだと思います。
あらゆる意味での、牧師職のバウンダリー(境界線)のなさ!
これがまず問題ではないかと思います。


<一般的な職場ストレスから見る牧師職のストレス>

仕事におけるストレスのリスク要因というのは、次のようなものらしいです。

● <雰囲気>職場における雰囲気(または「文化」)とストレスに対する見方。
● <要求>自分に対する要求。仕事量が多すぎるか少なすぎるか、
         危険な化学物質や騒音といった物理的危険にさらされているかなど。
● <裁量>自分の仕事の進め方に対しどれだけの影響力をもっているか。
● <人間関係>いじめがあるかなど。
● <変更>変更についてどれだけの情報が与えられるか、
         それらの変更は十分に計画されているようであるか。
● <役割>自分の仕事をどれだけ明確に理解しているか、葛藤はあるか。
● <支援>同僚および管理職からの支援。
● <訓練>自分の職務遂行に必要な技能をつけるための訓練

http://www.jniosh.go.jp/icpro/jicosh-old/japanese/library/highlight/facts/facts31.html  
国際安全衛生センターHPより)

これらの項目を牧師に関して一つ一つ見ていくと。。。

●雰囲気  教会の雰囲気がいいか、これは教会によりけりですね。
「ストレスに対する見方」:一昔前までは「ストレスを感じる=霊的でない」「燃え尽き症候群にかかる=不信仰が問題なのだ」というような考え方があったようで、ストレスに対する理解は低いと言えそうです。

●要求  「自分に対する要求。仕事量が多すぎるか少なすぎるか」:牧師に対する十人十色の期待、要求。これはかなり高いですよね。
人々の期待に応えたくても自分の限界もあり、そこで葛藤が生じるわけです。

牧師に対する要求:
第一に、人格・信仰・倫理・説教や指導などの能力・知識・・・要するに教会や周りの社会から、「欠けのなさ」を求められるところがあります。
第二に、働き手は少ないのに多くのニーズがあり、やらねばならないことは多様です。要求される仕事の量や種類は多いです。何でもできて当たり前、草取りからCSまで一人で何でもするオールラウンド・ワーカーを期待される場合もあります。
第三に、立派な前例が多かったりするので、自分自身への要求も大きくなりがちです。

●裁量   「自分の仕事の進め方にどれだけの影響力をもっているか」:牧師個人に任せられていることは、多いです。説教などに関してはほぼ完全に自分次第ですよね。教会全体への影響力は大きいし、「責任」が多くあります。
「その仕事が本人の裁量に任されている。それは力量として評価されることが多い」という意味では、福祉専門職などにも通じるところがあります。
http://www.asahi-net.or.jp/~UV3K-KMGI/jiritu2syo.html福祉施設における職員の自律性獲得についての一考察より)
逆に、生身の人間を相手にしている以上どうにもならないこと、教会と歩みをそろえる中で思うようにならないこともあるにはあるわけですが…。

●人間関係  チームでの仕事ではないので、孤独とも言えるし、
教会という人間の集まりの真ん中に立たされるという意味では人間関係そのもののような仕事とも言えるし。。。

教会の人間関係の特色:
1. 病んでいる人、傷ついている人が多くいること。そこには痛みゆえのデリケートさもつきまとい、頼られたり、怒りの矛先を向けられることもあり、また、どんなに問題を起こす人であっても、そういう人を教会が切り捨てることはできません。会社のように何かの目的遂行のために集まっている集団ではなく、人格的な部分での交わりなので、関わりも深いものになります。
2. 色とりどりのあらゆるタイプの人々がいること。普通に同世代とか子供でさえまとめて率いていくのは大変ですが、あらゆるニーズ、段階、世代、傾向の人々が教会という家族にはいるので大変です。
3. 教会自体がもめている場合、牧師をめぐってもめているケースが多いということ。なので、板ばさみ、矢おもて、集団対自分、牧師派と反牧師派などの構造の中に巻き込まれるケースもあるかと思います。
4. 長い。学校や会社よりも長い教会の人間関係です。弁護士とクライアント、医者と患者はその件が終わればさようならですが、牧師は、場合にもよりますがその人に一生関わります。

ちなみに、小さい教会は楽だと思われがちですが、
先の牧師の燃え尽きなどに関する実態調査の担当者は、
「このような症候群に陥り易いのは、
第1に、他者とうまく関係を持つことができにくい傾向の聖職。
第2に、教会内のことばかり問題にしている教会、
したがって、一般的に言って信徒の少ない教会で働く聖職である」とコメントしているそうです。
密な人間関係の中でお互いが近すぎて、小さい教会ほど人間関係は大変?

●変更  牧師が予定通りに仕事が出来る率は20%だそうです。急な来訪、葬儀、危機介入など「すぐにその場で判断・対応」しなければならないことが起こるので。
真夜中でも緊急事態に対応できるように、電話に出ることはもちろん、お酒や遠出を控えたり、車の燃料を満タンにしておくというようなことも聞いたことがあります。

●役割   これこそ最初に言っていた話。「自分の仕事をどれだけ明確に理解しているか、葛藤はあるか」。
一人の人の様々な役割(妻、母、姉、娘、教会員、会社員、などなど)を考えてみると、
誰でも結構いっぱいありますよね。
牧師ももちろん夫や父といった通常の役割を持っているわけです。と同時に、一言で「牧師」と言ってもそれ自体いろんなrole(役割)がその中に含まれている職だと思います。思いつくままに羅列すると:
( )内は、その役割に期待されそうなこと。

「説教者」(預言者かつ職人かつ学者かつエンターテイナー。霊的洞察、霊的力、人格、知識、話術)
「伝道者」(靴のそこをすりへらし、めげない熱意、対人関係のよさ、勇敢さ、神の愛)
「相談者」(理解ある人格、霊性、カウンセラーとしての技能、知識、親のような愛)
「教育者」(品性、魅力、知識、教える技能、大人、社会人として模範的な生き方)
「修道者」(並外れた霊性、聖なる生活、多くの時間をとりなしの祈りにささげる)
「管理者」(コーディネイター、運営、連絡、事務能力)
「指揮者」(リーダーシップ、人々をまとめ、率いる力、ビジョン)
「代表者」(教会ひいてはキリスト教の「顔」、情報管理、つながり、ネットワーク)
「よそ者」(地域、教会では新米、お世話になる側)
「人気者」(公人(公共物)、尊敬、教会の中心、自分の人気で仕事をしていく面がある)など・・・

「よそ者」「人気者」というのは英語でいうroleではないようですが、日本語で言う役割なら許されるかな~と思って加えてしまいました。

こんな様々な(というかバラバラな)ことが期待されてしまったりすると、「役割葛藤」も大きいと思います。
役割については、後でまた記したいと思います。

●支援  前回のデータにもあったように、牧師はこの支援の点で問題があるのかもしれません。これだけ「一人ぽっち」の仕事もなかなかないのでは。教会での対等な祈りの交わり、地域の男性社会や女性社会、宣教師のようなチームワークや祈りの支援グループのある牧師がどれだけいるでしょう。
守秘義務があるので人に言えない重荷もあります。
牧師会というのはそういう牧師同士のケアのためにあるはずなのですが、実際は・・・?あんまり癒しにならないこともあります。

●訓練  多くの場合、神学校でみっちり訓練されるのですが、にもかかわらず訓練を十分に受けていないと感じている牧師が90%。
牧師になってしまうとなかなか学びの機会はないですしね。
新卒で主任担任になるような場合は、藤掛氏曰く「新卒でいきなり管理職」。
私流に言えば
「医大を出てインターンなしでいきなりドクター・コトー」状態です。

まとめると、このように一般的なストレス要因から見てみても、牧師職は全般的に要求、役割、裁量、変更のストレス度は高い職場と言えます。
雰囲気や人間関係、支援、訓練は、教会や個人によって差があるでしょうけども。

ネガティブな感じになってきましたが、でも、暗くならないでくださいね~!ははは~。

埋め合わせに、楽しかった牧師会の写真を載せます。
1年前のですけど。いやされそうでしょ、この顔ぶれ。
画像


ではつづきはまた今度。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い

この記事へのコメント

へへへのへ
2009年05月02日 22:22
やっほーブンちゃん。うむ。よくまとめたね。これだけのことを。
「役割」のところで、しばし考え込んだよ…。大変そう、とも思うけど、本来、牧師に限らず、すべてのクリスチャンに求められているのかもしれないと思いました。説教者、伝道者、相談者、教育者、修道者、については、どの人も、ある程度託されてる役割なんじゃないかな。こんなことできない、と投げるのでなく、日々の献身の歩みを、恵みによって、積み重ねていって、主にあって成長させていただけたなら、牧師だけが燃え尽きる構造にならないかもよ~
ぶんこ
2009年05月04日 00:01
なるほどね。そうだよね。なんだか、「牧師」と「信徒」と分け過ぎるのが、日本の教会のいろいろな問題の根本原因のような気がしたりもしています。
NZでもイギリスでも牧師は「ピーター」とか名前で呼ばれていたし、なんかもっと対等で自然な仲の良さで、日本の教会に帰ってきて、「わ~、なんでこんなに分けるんだろう」と思ったもんね~。
gray hair
2009年05月05日 15:25
うお~・・・・。すげ~・・・。またもや、じっくり読みます。そうなんですよ・・・幼小中高の教師(もちろんPTA 的な熱心な親もセットでついてきます)、あと精神科医、カウンセラー、お金に飲まれない・・・・祈り、聖書読みつづける経営者(社長・・・・教会に献金がありますから)接客業務のOL、サラリーマン、国、英、社の先生(説教あるから)う~・・・・まだまだありますが・・・・疲れた、こんな人間おんのか?でもやっぱり、信頼できる信徒が必要ですよね。祈って・・・聖書読んでがんばります。あっお金も要りますね・・・まっいいや。
ぶんこ
2009年05月07日 13:48
gray hairさんへ:なんか面白い具体例ですね。まあ、主任か副牧師か、とかによっても違いますし、いろいろ人によってですよね。また実際に幼稚園や施設がある教会なんかは、さらに大変なことになりますね。

この記事へのトラックバック