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zoom RSS 人気がほしくなったアル・カ・ネオ(お話)

<<   作成日時 : 2017/02/10 01:10   >>

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"アル・カ・ネオ"シリーズvol.1
あらすじ:ネオは生まれたてのお金です。みんなにもっと自分を「欲しがって」もらいたいと思ったネオは、悪魔の誘いにのって、人気者になりますが・・・。

対象:小学生以上


人気がほしくなったアル・カ・ネオ


ある時、銀行で一枚のお金が生まれました。
名前はアル・カ・ネオ。

ネオは銀行から出ると、ある女の人にもらわれていきました。
この人がぼくのお母さんになるのかな?
ネオはどきどきしながら、パリッと背すじをのばして
お財布の中でいいこにしていました。

でも、3日後には八百屋さんのかごの中にほうりこまれ、
その次の日には、見知らぬおじさんにもらわれ、
そのあとには「うぃぃぃぃん」
と、自動販売機に飲み込まれました。

「いったいどうなってるの?」
せまくるしい自動販売機の中から、
落ち着くひまもなくジーンズのポケットにひっこし、
もうだいぶくしゃくしゃになりました。

どうやらこうしてひっこし続ける人生らしい、
ということが、ネオにもだんだんわかってきました。
画像

でも、次にいい香りのする女の人にもらわれたネオは、
すべすべしたお財布がすっかり気に入り、
ここにずっといたいな、と思いました。
ところが女の人は、さっさとネオを取り出すと、
ちっぽけな香水の瓶ととりかえて、行ってしまいました。

 「あんなつまらないものの方が僕よりいいの?」
ネオはくやしくなりました。
そして、レジの中にしまわれながら、
「僕だって、いつかみんなに欲しがられるようになってやる!」
とさけびました。

すると「チーン」という音と共に、レジの奥から悪魔が現れて
「いいことを聞いたぞ」と言いました。
「どうだね、みんながおまえに夢中なるように、魅力をさずけてやろうか」
「本当?」ネオは喜んで言いました。
「僕、世界一の人気者になって、みんなをふり向かせてやりたい」

そこで悪魔はネオに魅力をさずけて言いました。
「みんなが、おまえを欲しくて欲しくてたまらなくなるように」

そして、去りぎわにこう言い残していきました。
「これでだれもがおまえに夢中になるだろう。
おまえの魅力よりも強いものにしか、この魔力はとけはしない。ふっふっふ…」

 
悪魔の言ったとおりに、ネオは人気者になりました。
ネオを見た人はすぐに「欲しい!」と思い、
ネオを手にした人は「ぜったい誰にもわたさないぞ!」と思うようになったのです。
スーパースター、アル・カ・ネオ来たる!
みんなからもてはやされ、欲しがられ、
後生大事に守られ、ネオは大満足でした。

でもそのうち、こんな声がたくさん聞こえてきました。
「欲しい!」「どうしても欲しい!」
「ネオが欲しかったらこっそりうまくやってくれよ」
「ネオを手に入れるために自分を売る方法」
「私のよ!」「ネオを独り占めして、あんたなんかもう妹じゃない」
「ネオがとられたらどうしようと…心配で夜も眠れないんです」

ネオを手にした人は、しあわせなはずなのに、
みんなふしあわせそうに見えました。
人々はネオのために生き、全てを失って死んでいきました。

ネオは自分がいやになってきました。僕って、何のためにいるんだろう。
まるで、悪魔の釣り糸の先についたえさみたいだ。
そうなのです、
ネオにもだんだん、これが悪魔の呪いだということがわかってきました。
ネオの魅力は、人々にネオを追いかけさせて、
その人生を狂わせるものだったのです。 

しまいには、まっくらなタンスの中に閉じこめられて、ネオは、
「僕なんて、火事でうっかり燃えちゃたらいいのに」とさえ思うようになりました。

その頃、ネオは、ドケチじいさんという人のタンスにいました。
ドケチじいさんには、たろうという孫が一人いました。
たろうは6歳のかわいい男の子でしたが、
ドケチじいさんはたろうとそのお父さんお母さんが遊びに来ても
「金の無駄だから来るな」とか「お前らにやる金は一銭もないぞ」と言って、すぐ追い返してしまうのでした。

たろうのお父さんとお母さんは、
「おじいちゃんはどうしてあんなにお金が好きなんだろうね」とさびしそうに話しあいました。
たろうも「おじいちゃんは僕よりお金の方が好きなんだ」と悲しく思っていました。


あるとき、タンスにいるネオのそばに天使がひらり、と何かを落としていきました。
それは小さなお年玉袋でした。
年の暮れにお金をかぞえようと引き出しをあけたドケチじいさんは、お年玉袋を見て、
「おや」とつぶやきました。
そして、ふと思いついたようにネオをそれに入れました。


お正月。たろうと両親が来ると、
「これ、たろう」ドケチじいさんはお年玉袋をさしだしました。
中に入っているネオを見て、たろうは息をのみました。
「おじいちゃんの、大事な、お金!」
たろうはこんな大きなお金をもらったのは生まれて初めてでした。
孫の嬉しそうな顔に、ドケチじいさんのほっぺもちょっとゆるくなりました。
「誰かのこんな顔を見るのは、ずいぶん久しぶりだなぁ」
と、ドケチじいさんは思いました。
「よかったね、たろう」お父さんとお母さんもすっかり笑顔になりました。
「欲しがっていた自転車が買えるね」「将来のためにためておいてもいいんだよ」

ようやくたんすから出られたネオも、たろうの小さな手の中でやれやれとほっとしました。

ネオは、たろうにとって、特別な宝物になりました。
ネオの魅力のせいではなく、もっと別の理由での宝物でした。
たろうはネオのしわを指でのばし、模様をあきることなくながめました。
おひさまにすかすと、そこにはドケチじいさんがほほえんでいるのが見えるのでした。
たろうのそのまなざしが、ネオにそそがれるたびに、
ネオは悪魔の呪いが解けていくのを感じました。

「おまえの魅力よりも強いものにしか、この魔力はとけはしない」
悪魔の言ったことを、ネオは思い出しました。
「僕の魅力よりも強いもの…そうか」とネオは思いました。
「この子は僕を見てるんじゃなくて、僕を通しておじいさんを見てる。
おじいさんへの愛の方が、僕の魅力より強いから、魔力が解けていくんだ…」


ある日のこと。
たろうはネオを連れて病院に行きました。
薬のにおいのする白いベッドに、ドケチじいさんがねていました。
たろうは「おじいちゃん、これ、お見舞い」と言って、
そっと枕の下にネオを入れました。

「おや、これはわしのあげたお金にちがいない。大事にとってあったのものを…」
ドケチじいさんはびっくりし、またほっぺたがちょっとゆるくなりました。


こうして、ネオはドケチじいさんの宝物にもなりました。
ドケチじいさんは毎日、
愛のこもったまなざしでネオをながめました。
ドケチじいさんが、ネオを通してたろうを見るたびに、
ネオはますます自由になっていくのを感じました。

 
やがてよくなったドケチじいさんは、退院するとき、となりのベッドのまずしい親子に
ネオをあげました。
この宝物は人にあげるともっと宝物になるということに、
ドケチじいさんは気づいたのでした。
小さな病気の男の子を抱いて、ネオを受け取ったお母さんの目に、
きらきらと宝石のような涙が宿りました。
その輝く光がネオに注がれ、
「神様、ありがとうございます」
お母さんがネオを通して天を仰いだ瞬間、
ネオの呪いは完全に解け去ってしまいました。

ついに悪魔に勝ったのです。
ネオはすっかり自由になりました。


その後、ネオはもう前ほど人気者ではなくなりましたが、少しも残念には思いませんでした。
ネオは自分がすばらしい宝物になれることをしりましたし、
自分の魅力よりも、愛のために使ってもらえる方が、
ずっとうれしかったからです。
また旅をするようになったネオは歌いました。

ぼくはオカネ 価値あるアル・カ・ネオ
ねだんよりも 価値あるアル・カ・ネオ
ぼくはオカネ 役立つアル・カ・ネオ
誰かのために 役立つアル・カ・ネオ



(おしまい)

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