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zoom RSS さいこうのさいごさん(お話)

<<   作成日時 : 2017/02/07 00:58   >>

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あらすじ:神様がこの世界を造られたとき、
      そのしめくくりに最高の生き物(さいこうのさいごさん)を造ったと聞いて、
      動物たちは連れだって見に行きますが、そこに見た意外な生き物にみんな驚いて・・・。

対象:小学生以上


  <さいこうのさいごさん>      

この世界がうまれたときのことです。

神さまは太陽や星、空や海、花や木々や山々をつくり、
それからどうぶつたちをつくられました。

世界のできあがりまであとひといき。
できたてほやほやのいきものたちは、わくわくしながら、神さまがこの世界をしあげるのをまっていました。

神さまがおしまいに、さいこうのいきものをつくっているというのは、もっぱらのうわさでした。
それでみんなはこのさいごのいきものを「さいこうのさいごさん」とよんでいました。

「さいこうのさいごさんこそが、わたしたちのリーダーなんだそうよ」
ねずみがうきうきといいました。
「とっても強いいきものなんだろうね」
ライオンがうっとりといいました。
「わたしよりも大きいにちがいない」
と恐竜がいい、
「それに、わしよりも長生きなんじゃろうなぁ」と亀がいうと、
みんな首を上に下にうごかしながら、
そうだそうだと言いました。

「チーターさんよりも速くて」
「たこさんみたいに体の色もかたちもかえられて」
「くじゃくさんよりきれいなのにちがいない」

そんなふうにいいあっているうちに、みんなはお互いのもっているすばらしさに感激しはじめて、
「すごいな、なんて長い鼻でしょう」
「そういうおたくこそなんてりっぱな角!」
と、きりのないほめあいっこをしていましたが、
そのうちにとうとうまちきれなくなって、
さいこうのさいごさんをひと目見ようと、そろって出かけていきました。
画像

ところが、いよいよそばまで来ると、
「お先にどうぞ」
「いや、あなたから」
みんなもじもじして立ち止まってしまいました。
神さまがさいこうのいきものをつくっているところへ行くのは、
とてもおそれ多いような気がしてきたからです。

けれどもとうとう好奇心旺盛な犬が、しっぽをふりふり、
まぶしい神さまの方に近づいていきました。

神さまはそばに来た犬にほほえんで、
「すばらしいでき上がりだろう?」
と言いました。
犬は、神様のてもとをのぞきこみました。
そこにはさいこうのさいごさんがいました。
まだ命がふきこまれていなかったので、
ぐったりしたからだだけでした。

犬はめんくらったようにそのからだを見つめました。
そしてちょっと困ったようにしっぽをふって言いました。
「でも神さま、まだでき上がっていないですよね?」
「というと?」「つまり・・・しっぽをお忘れでは?」
「ああ、しっぽはつけないことにしたのだ」
と、神さまはやさしく言いました。
犬のしっぽがぴたっととまりました。
「え?しっぽなしですって?ではどうやって気もちをあらわすんですか?」
神さまはこたえました。「かわりにことばというものをあたえておいた」
「ことば?」
犬はそれを探して鼻をひくひくさせました。
「ことばは見えないし、においもしないのだよ」
神さまは言いました。
「でもうまく使いこなせば、何びゃく何ぜんもの気持ちをつたえることができるどうぐなのだ」

しっぽという言葉を聞いてやってきた猫が、犬のそばから顔を出して目を丸くしました。
「あら、つるつるだわ。毛皮がない」
「うん、毛皮はあたえないことにしたのだ」
神様はやさしく言いました。
「なんですって」
猫はびっくりしてさけびました。
「さわって楽しく見てうつくしい毛がわがないなんて!」
神様はちょっとおかしそうに言いました。
「毛がわだけでなく、このものは自分でいろいろなものをえらぶことができるのだ。
そういうじゆうとちえとをわたしはあたえたのだよ」

馬もやってきて、猫と犬のうしろからのぞきこんで言いました。
「ひずめがないのも、そういうことなので?」
「そのとおり」
神様は馬にうなずきました。
「それに、気づいたかい?彼らにはそもそも足が二本しかないのだ。
かわりにこの手というものをあたえたからね」

それを聞いて、はなれたところにいた動物たちに、ざわめきがおこりました。
「足がたった二本ですって?」
「手って、何?」
知りたくてたまらなったみんなは、とうとうそろって丘をのぼってきました。

そのあいだに犬と猫は自分たちのまえあしと「手」とを見くらべていましたが、
「手って、なんだかひょろながくてクモみたいですね」
と言いました。
神さまはたのしげに、
「手は、いろいろなものをつくり出すことができるのだよ」
と言いました。

動物たちはやってくると、思いがけないものを見てびっくりしてしまいました。
いちばん口をあんぐり開いたワニが、あえぎました。
「まるで…まるで、まるでイソギンチャクですな!」
それを聞いてみんなはいっせいに言いはじめました。
「何を言うんだ、それを言うならサルだろ?」
「サルさんだって!つるつるで、むしろイカさんじゃないか」
みんながどちらかというとイカやイソギンチャクだと同意しかけたとき、
「みんな、ざんねんながらこの生き物は水の中では生きられないのだよ」
と神さまが言いました。
「ついでに言っておくと、およぐことも、はしることも、のぼることも、
みんなに比べたら、まるでできないのだ」

「まさか…とぶこともですか?」
ワシがショックを受けたように言いました。
「ぜんぜんとべない」
神さまはあっさり言いました。
「彼らはたいして何もできない。二本足であるけるだけだ」
「!?」
動物たちはあっけにとられてしまいました。
リスだけがそのちんもくに笑いそうになって、あわてて口に手をあてました。

「鼻も目も耳もあまりきかない。そのかわりに、思いやる力をあたえた」
「…」
動物たちは、とほうにくれたように神さまの顔を見つめました。
「でも、神さま…さいこうのさいごさんは、てっきりいちばんすごい生き物なのだと思っていましたけど」
鹿が目をぱちぱちして言いました。
「そうだとも」
神さまはおちつきはらって言いました。
「これこそとっておきの生き物なのだ」
でも動物たちには神さまの言っていることがよくわかりませんでした。

「しかしずいぶん、よわよわしいようですね」
水牛がこまったように言いました。
「角もなく」
とサイ、
「きばもなく」
とトラ、
「つめもなく」
とクマ、
「カラすらもぜんぜんない」
とカニ、
「この生きものには、身をまもるものが何もないんですか?」
ハリネズミがまとめて言いました。

神さまはみんなを見まわしました。
そのまなざしはそれぞれのよろいのすばらしいさをほこりに思うのにじゅうぶんだったので、
みんなうれしそうに鼻をふくらませ、ちょっとあしぶみしました。

神さまは少しだまっていましたが、
「わたしは彼らを、自分で自分をまもらないものにつくったのだ」
と言いました。
「やわはだで、むぼうびなものに。よわくて、きずつきやすいものに。
ほかの者なしでは、生きることもできないものに。
自分をまもるよりも、はだかの自分をそのまま相手にさしだせるような、
そんなかんけいをひつようとするものに」

そして、動物たちをじっと見て、つけたしました。
「たがいのよわさゆえにひとつになるものに」

動物たちはいっしょうけんめいわかろうとしてきいていました。
木や草の一本一本も、からだをかたむけてきいていました。

「でももちろん、彼らは自分をまもることも、そのためにたたかうこともできる。
そのじゆうをもわたしはあたえた」
神さまはかすかなためいきとともに言いました。
何びきかの強いけものたちはそれをきいて、笑いたいような泣きたいような顔をしました。
このつるつるした二本足のいきものがたたかうだなんて!

「神さま、でもそんなよわいものが、おらたちのリーダーでだいじょうぶなんで?」
とカバがききました。
みんなも神さまの顔を見つめました。
花の上のミツバチたちも、空にかくれている星たちも、
息をつめて神さまのこたえをまちました。

神さまは生まれたてのみずみずしい世界を見わたして、言いました。
「よわいものがあなたがたのまんなかになったら、世界はうつくしくないだろうか?」
その声は空中に響いて、
まるでこの世界がはじめてきく音楽のようでした。

「つよいものが力をふるうのでなく、よわいからこそささえあう世界。
かちまけではなく、ゆずりあい、生かしあう世界。
足りないからこそ与えあい、感謝しあう世界。
あいされ、ゆるされ、生かされていることを、ともによろこぶ世界は、うつくしくないだろうか」

動物たちの顔に、あさひのようにひかりがさしはじめました。
「神様、なんとなく」
ろばが耳を立てて言いました。
「わかる気がします」
ひつじたちもメェメェとうなづきました。

神様はあたたかいまなざしをみんなと、そしてさいこうのさいごさんに向けました。
「このものは何ももっていない。何ひとつ。
愛をうけるいれものとして、わたしがつくったからだ。
ごらん、何もないからたくさんのあきばしょがある。
わたしのためのばしょがね。
わたしはこのもののうちにすみたいのだ」
神様はにっこりしました。

ああ、おお、とかんしんしたようなおどろいたようなさけび声が、
みなの口からもれました。
「それはすごい。神さまがすまわれるなんて」
「それならもちろん、だいじょうぶですね、神さま」

「わたしはこのものをとおして、あなたたちとともにいる」
神さまは言いました。
「このものはわたしの愛をみんなにとどけるくだになるのだ」

動物たちはみんな、しあわせいっぱいにのどをならし、さけびました。
「なんてすてき!なんてすばらしいんだろう!」
「ほんとうにそれこそさいこうのいきものだ!」
子牛はかえるといっしょにぴょんぴょんはね、ぐるる、きゅるる!というさえずりがあたりいちめんにおこりました。

神さまはにっこりしながら、
「さて、それじゃそろそろこの『ひと』に、わたしの命をふきこむことにしようか」
と言いました。
「わたしの霊をこの人に与えれば、この世界はかんせいだからね」

みんなはいなないたりぐるぐるまわったり大騒ぎして賛成しました。
神さまだけが、しずかに何かを考えておられるようでした。
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そのあと、神様がさいこうのさいごさんに息をふきこんだ
そのしゅんかんこそは、
みんなが生まれてはじめてあじわった、もっともすばらしいしゅんかんでした!

―終―

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